






僕とその人のラインはこのカフェで交わっているように見えた
ほら、確かにそう見えるだろう?
2-1
カウンターの席に座るのははじめてだ。
いつもの二階の席ではないから、ちょっと落ち着かない。
店内は混雑していた。久しぶりに天気が良いからだろうか。
この店―――「case」に来るのも5度目になる。
3週間という短い間で5回というのは多いのだろうか。
今日はついに店長らしき人に「いらっしゃいませ」
ではなく
「こんにちは」と言われてしまった。
これじゃ常連さんじゃないか。
そもそも、こんな風にこのカフェに足を運ぶようになったのは、あの本のせいかもしれない。
あの、赤い本。
今月のはじめ、何気なく手に取った赤い表紙の洋書をパラパラとめくってながめていると、あるページに走り書きがあった。
「私はこれが好きあなたは?」
サラッと流れるように書いた、まさに走り書きなのだろう。
けれど、その文字の女性特有のやわらかい形に好感をもった。
素敵な字だ。
自分とは比べられないな、なんて思う。
その字が綺麗だったから、多分そんな単純な理由で僕はペンをとった。
「僕はこれかな」
それから約1週間後、待ち合わせが土壇場で1時間遅らされ、突然の暇を持て余してこのカフェに訪れた。
また、同じ席に座り、ふと視界に赤い本が入ってあのメッセージにリアクションしたことを思い出した。
まさかな、と小さな期待混じりで僕は本を手に取り、ページをめくった。